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就活学生のための注目イベントレポート

桐蔭横浜大学 特別講演レポート
企業向けITの世界とは――IT業界研究のススメ


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2010/12/20


就職活動には欠かせない「業界研究」。特にIT業界を目指す学生にとって、企業向けITの世界について知っておくことは重要だ。桐蔭横浜大学で行われた、企業向けITの世界に関する講演の内容をレポートする。

 12月8日、桐蔭横浜大学で、工学部および医用工学部の学生向けに、特別講演「業務ソフトウェア 〜オラクル研修講師が語る『ミドルウェアって何?』〜」が行われた。

甲木洋介氏
日本オラクル
甲木洋介氏

 講師を務めた日本オラクル オラクルユニバーシティ 第一研修部 シニアインストラクターの甲木洋介氏が、学生にとってなじみのないミドルウェアやIT業界の構造などについて解説した。IT業界への就職活動において欠かせない業界研究の一環として行われた講演の模様をレポートする。

■ IT業界を目指すなら知っておきたい「ミドルウェア」とは?

 冒頭で甲木氏は「会社としてではなく、個人の見解。今日は休暇をとって来ています」と断りつつ、最初に「ミドルウェアとは何か」について解説した。甲木氏はミドルウェアを「OSとアプリケーションの間にあるソフトウェア」であると説明し、代表的なミドルウェアとしてデータベース管理システムやアプリケーションサーバを挙げた。

 ユーザーとしてシステムやWebサービスを利用しているときは意識されないミドルウェアだが、甲木氏は「IT業界への就職を考えているのであれば、この絵(編注:下記の「システム構成図」)を意識しておいた方がいい」とアドバイスをした。

システム構成図
システム構成図

■ IT業界を4分類。どの領域も生き残り競争が激しい

 続いて甲木氏は「ミドルウェアを取り巻く環境」として、IT業界全体を整理。「分類の仕方はいろいろあるが、『企業向け/一般向け』という軸と、『ハードウェア/ソフトウェア』という軸で整理するといい」と語った。

 下記は甲木氏によるIT業界の分類である。代表的な企業と、それぞれの領域の市場動向も付記する。

  • 一般向けハードウェア

    • PC&携帯電話:日本電気(NEC)、富士通、東芝、アップル

    • インターネット接続機器:アイ・オー・データ機器、バッファロー

    • ゲーム:任天堂、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)、マイクロソフト

    • 単体ではもうからず、ソフトウェアやサービスなどと組み合わせて販売するという戦略が増えている(100円パソコンなど)

  • 一般向けソフトウェア

    • OS:マイクロソフト、アップル

    • アプリケーションソフト:マイクロソフト、アドビ

    • ゲーム:任天堂、SCE、スクウェア・エニックス

    • ダウンロード販売、無料+広告モデル、無料+追加課金モデルなど、ビジネスモデルが変化してきている

  • 企業向けハードウェア

    • サーバマシン:IBM、HP、オラクル

    • ディスク装置(ストレージ):EMC、IBM、HP、オラクル

    • ネットワーク機器:シスコシステムズ、ジュニパーネットワークス

    • 合併・買収が多い

  • 企業向けソフトウェア

    • OS:マイクロソフト、レッドハット、オラクル

    • ミドルウェア:オラクル、IBM、日立、富士通

    • ERPパッケージ:SAP、オラクル

    • システムインテグレーション:大手企業グループ会社や独立系企業など

    • サービス:セールスフォース・ドットコム、アマゾン

    • オープンソースソフトウェア(OSS)の台頭や、サービス事業の躍進、クラウドコンピューティングの登場など、非常に変化が激しい

 補足として甲木氏は「企業向けと個人向けの違い」について解説。企業向けの場合、法律や業務ルールに準拠することや、利益を最大化するという目的があることなどを説明し、「企業はコンピュータシステムを趣味で導入するわけではない」と付け加えた。

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 ここまでのまとめとして、甲木氏は「IT業界と一言でいっても多種多様な世界。しかも、どの領域でも生き残り競争が激しくなっている。自分の興味と照らし合わせて、しっかりと業界研究をしてほしい」と語った。

■ 外資系企業で働く際の4つのポイント

 最後に甲木氏は、自らの経験をもとに「外資系企業で働くということ」について説明した。ポイントは「モノと対価」「変化への対応」「継続学習」「英語」の4つ。

● モノと対価

 「アメリカは日本企業と違って人情が通用しづらい。常に対価や費用対効果を意識しないとダメ」

● 変化への対応

 「自分の勤めている会社が合併・吸収されて、社名が変わることはよくある。また、法律が変わって仕事に影響を及ぼすなど、変化が激しい」

● 継続学習

 「常に学習し続けないと、変化に対応できない。いまのうちから『呼吸をするように勉強する』癖をつけておいた方がいい」

● 英語

 「日本人以外の人と仕事をすることになる。特に外資系企業への就職を考えているのなら、英語はできた方がよい」

■□■

 学生にとっては業務ソフトウェアや企業向けITは「未知の世界」だったようで、多くの学生が講演に聞き入っていた。企業向けITの業界への就職を考えている学生は、業界構造や市場動向をきちんと研究しておくとよいだろう。



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